社会資本としての住環境研究会 第7回

『ユニバーサルデザインの基礎と実践』出版記念セミナー

ひとの感覚から空間デザインを考える
プラスのデザインからマイナスのデザインへ

2021年2月13日(土)
14:00〜16:00

■Zoomによるオンラインセミナー

チラシPDF

主催:一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 身体と空間特別研究委員会
   一般社団法人 LIFETIME HOMES ASSOCIATION

■趣旨
これまで、研究会ではライフタイム・ネイバーフッドの考え方を紹介してきましたが、地域のユニバーサルデザインの実現において、重要な点のひとつにインクルーシブデザインの実践があります。
インクルーシブデザインはユーザーを中心に考える設計やデザインの手法です。そのプロセスは、ユーザーである当事者として多様な人が参加することによる発見からスタートし、サービスやコミュニケーションを含む総合的なデザインを目指すものです。そこではどんなグループの人びともデザイン・チームの一員となって仕事を進めることを求められます。
そのなかでデザイナーは、社会的な諸問題を解決する役割を自覚し、ユーザーの代弁者となり、公衆についての理解を深め、包括的な総合者としてデザインの成り行きを見る目を持たなくてはなりません。デザインによる排除をなくすために、障害はデザインの側にあることを認識し、いわばデザインの社会モデルを実践することが重要です。

研究会理事の原利明が編著者のひとりである『ユニバーサルデザインの基礎と実践 ひとの感覚から空間デザインを考える』は、環境にある障害を、ひとの身体・感覚から捉えて整理し、解消するためのデザインの解説書です。
ユニバーサルデザインを障害者の問題ではなくデザインの問題として考え、環境のバリアをなくすためのインクルーシブデザインにおける設計者、デザイナーのあり方を問う、ひとつの道標となるものです。
今回は特別編として、編著者の方にこの本の内容を伺いながら、デザインする側、コミュニティの側が当事者にアプローチするインクルーシブなデザインの大切さについて考えます。

■プログラム
14:00-14:05:ご挨拶 原利明(一般社団法人LIFETIME HOMES ASSOCIATION 理事)
14:05-15:35
イントロダクション(5分)×6+ディスカッション
 原利明・伊藤納奈・太田篤史・船場ひさお・松田雄二・矢野喜正(身体と空間特別研究委員会) +丹羽太一
15:35-16:00:質疑応答

■セミナー概要
『ユニバーサルデザインの基礎と実践』の編著者6名によるこの本の紹介から、それぞれのデザイン論の要点や実践例などを伺い、人間の身体・感覚とデザインの関係性について、あるいはユーザー中心のデザインをデザイナーはどう考えだすことができるか、そのためのユニバーサルデザインとはどういうものかなど、これからのデザインのあり方をディスカッションを通して探っていきます。

■講師
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 身体と空間特別研究委員会
原 利明
はら としあき
鹿島建設建築設計本部所属。日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修了。博士(人間科学)。鹿島建設建築設計本部建築設計部入社。2004年から2年間、国土技術研究センター出向。国や地方自治体のバリアフリー・ユニバーサルデザインに関する調査研究に従事。2001年から開港まで中部国際空港UD研究会に参加。その後、新千歳国際空港国際線PTB、東京国際空港国際線PTB、成田国際空港などの国内の主要空港や公共施設、病院のユニバーサルデザインに関わる。 日本福祉のまちづくり学会副会長。身体と空間特別研究委員会委員長。一級建築士。
伊藤納奈
いとう なな
産業技術総合研究所人間情報インタラクション研究部門 行動情報デザイン研究グループ グループ長。早稲田大学大学院理工学研究科建築工学専攻修士課程、イリノイ大学アーバナ・シャンペン校建築学修士課程、William McDonough Architects in New York、鈴木了二建築計画事務所などでの設計経験を経て(へて)、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は高齢者・ロービジョンの視覚。計測データを基にしてISOの人間工学分野でアクセシブルデザインの規格の提案、審議を行っている。
太田篤史
おおた あつし
照明設計事務所所属。横浜国立大学大学院工学研究科計画建設学修了。博士(工学)。同大にて建築環境工学(音環境、音と空間認知、環境心理など)について研究。東京国際空港国際線PTB、成田国際空港などのユニバーサルデザイン検討に関わる。
船場ひさお
ふなば ひさお
こどものための音環境デザイン代表理事、横浜国立大学客員教授。九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻博士後期課程修了。博士(芸術工学)。千代田化工建設などにおいて多数の公共空間の音環境デザインを担当。専門は騒音制御、建築音響、音環境のユニバーサルデザイン、こども施設の音環境デザイン。音や音楽と地域のデザイン、家電製品の音づくりなどの研究・実践に取り組む。
松田雄二
まつだ ゆうじ
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。久米設計、お茶の水女子大学大学院准教授などを経て現職。専門は建築計画学、とくに視覚障害者の歩行環境・障害者の地域居住環境・福祉施設計画など。東京国際空港国際線PTBや西葛西・井上眼科病院のユニバーサルデザイン設計などに関わる。共著に『利用者本位の建築デザイン』ほか。2013年日本建築学会奨励賞受賞。一級建築士。日本福祉のまちづくり学会理事。身体と空間特別研究委員会副委員長。
矢野喜正
やの よしまさ
矢野住環境研究所代表。千葉大学大学院人文公共学府非常勤講師。東京藝術大学美術学部在学中の1992年から、先天色覚異常の当事者組織 色覚問題研究グループぱすてるにて当事者支援活動を開始。同大卒業後、設計事務所勤務を経て(へて)、1999年に一級建築士事務所設立。個人住宅の設計・監理を生業としながら当事者支援活動を継続。2009年、千葉大学大学院にて、当事者支援に関する制度研究に着手。同大学院人文社会科学研究科博士後期課程単位取得退学。一級建築士。

■申込み
 参加費 無料

 当研究会では、「社会資本としての住環境研究会」として定期的に勉強会を開催する予定です。福祉制度における「社会資本としての住宅」の役割に加え、地域においてどのような住環境が提供されるべきなのか、といった「社会的インフラストラクチャー」としての住宅と地域のあり方を探っていくことを目的とした研究会です。

*第1回研究会「地域の中で考える住宅のあり方について」2018年1月
*第2回研究会「わたしと地域の回復—多様性のまちづくり」2018年4月
*第3回研究会「地域と住宅」2018年12月
*第4回研究会「ライフタイムホームズの住宅 —今泉台—」見学会 2019年6月
*第5回研究会「地域コミュニティとグループリビング」2020年9月
*第6回研究会「重度障害者が地域に暮らし続けるための住環境」2020年12月

社会資本としての住環境研究会

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